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200歳へのテクノロジー (6)
 
傷ついた組織細胞を再生する技術

生物には自分の組織や器官を再生できるものがある。イモリは逃げるときに尾を切り離すことがあるが,しばらくしてその尾は再生する。また扁形動物のプラナリアは体を二つに分断してもその両方が再生し,二つの個体になることが知られている。

 しかし,私たち人間の体はそうはいかない。肝臓や表皮のように再生能力をもつ組織もあるにはあるが,イモリやプラナリアのような強い再生能力はもっていない。こわれた機械の部品を交換するように,病気になった臓器や組織を正常なもので置きかえることができれば,私たちは多くの病気の心配から解放されるだろう。

 組織や器官を再生する「再生医療」の中で最も注目を集めている研究分野の一つは,組織に分化する能力をもつ幹細胞の研究である。幹細胞とは文字通り「幹となる細胞」で,組織細胞に分化する前の段階の細胞を指す。幹細胞は分化能と自身を増殖する能力をもつ。

 くりかえし増殖をつづける能力と,すべての組織や細胞に分化する能力をもつとされるのが「ES細胞(Embyonic Stem Cell)」である。「万能細胞」や「胚性幹細胞」ともよばれ,現在の再生医療においてもっとも注目されているものだ。ES細胞は受精卵から細胞分裂がすすんだ胚盤胞の内部細胞塊から取りだすことができる。これをさまざまな組織細胞に分化させ,正常なはたらきを失った組織に送りこむ「細胞治療」の実現が期待されている。

 京都大学再生医科学研究所の笹井芳樹教授らは,アカゲザルのES細胞からドーパミンを産生する神経細胞を得ることに成功している。パーキンソン病はドーパミンをつくる神経細胞の変性が原因と考えられており,博士らの発見は治療につながる成果といえる。

 また,核を取り除いた未受精卵に体細胞の核を移植して「クローン胚」をつくれば,その胚から患者本人の遺伝情報をもった拒絶反応のないES細胞をつくることも可能だと期待されている。同研究所の中辻憲夫教授は,「実際にクローン胚によるES細胞が医療に応用可能になるには,その作成に高い成功率をおさめる必要があります。一回の治療のために多数の卵子が必要というのでは実現はむずかしいわけです」と語っている。

 また体細胞を初期化(遺伝情報のリセット)することができれば,それによっても拒絶反応のないES細胞を得られる可能性がある。

 その中間として,中辻研究室の多田博士らがマウスにおいて研究を進めているのが,ES細胞と体細胞の融合細胞である。この融合細胞は正常細胞の2倍の染色体をもつが,増殖能をもち,さまざまな細胞に分化するという。この細胞の遺伝子の半分は体細胞を提供したマウスのもので,半分はES細胞のものだ。中辻教授は「ES細胞の遺伝子は操作できることがわかっています。拒絶反応をおこす遺伝子をこわせば,患者に適合するオーダーメイドのES細胞ができるようになるのではないでしょうか」と語っている。
 
 自治医科大学遺伝子治療研究部の小澤敬也教授と神経内科の中野今治教授らはパーキンソン病の遺伝子治療を目指している。パーキンソン病はドーパミンという物質をつくる神経細胞が変性するためにおきる病気である。ドーパミンをつくる遺伝子を脳の細胞に導入すれば,かわりにドーパミンをつくるだろうというのである。人為的にパーキンソン病の症状をおこさせたサルでの実験では,遺伝子治療によって明らかに症状が回復したという。

 世界ではじめての遺伝子治療は1990年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)においてアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症の患者に対して行われた。ADA欠損症はADAという酵素をつくることができないことにより,免疫不全をおこす病気である。この遺伝子治療では,患者の血液から取りだしたT細胞にADAをつくる遺伝子を導入し,再度体内にもどす方法で行われた。

1995年に北海道大学で行われた日本ではじめての遺伝子治療もこのADA欠損症に対するものであった。

 この方法のように,患者の細胞を取りだしたうえで外来の遺伝子を導入し,ふたたび細胞を患者の体内にもどす方法を「ex vivo法」という。これに対して体内に直接外来の遺伝子,あるいは遺伝子をのせたベクターを打ちこむ方法を「in vivo法」という。ex vivo法は目的の細胞だけに遺伝子を入れるのが簡単で,遺伝子がうまく入ったかどうかを確認しやすいなどの利点から,初期の遺伝子治療で比較的多く行われてきた。
 一方in vivo法は,目的の細胞や臓器以外に,関係のない細胞へ遺伝子が導入されることが懸念されていた。しかし遺伝子を細胞に運ぶベクターの研究が進み,治療の安全性も確認されてきたため,最近では多く行われるようになってきている。

 「ゲノムの解析が進んだ現在,遺伝子のはたらきがますます注目されるようになっています。遺伝子治療とほかの治療法とを融合したり,正常な遺伝子を付加するだけでなく間接的な治療効果をもたらすような新しい治療のアプローチが開発されたりすれば,遺伝子治療は今後いっそう重要なものになっていくでしょう」と小澤教授は語っている。
 
細胞治療
幹細胞から各種の組織細胞を分化させ,それを正常なはたらきを失った組織に移入する治療法。万能細胞ともいわれるES細胞の分化能をコントロールし,必要な組織の細胞をつくることができれば,さまざまな疾患に応用できる可能性がある。京都大学の笹井教授らはアカゲザルのES細胞からドーパミンを産生する神経細胞の分化に成功した。

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