切るか、散らすか。盲腸の診断と治療


メディカルライフ教育出版2008年3月号より

北野クリニック(内科)
北野英基

ドクターアドバイス画像
▲上記出版物より
ー急性虫垂炎の診断と治療-

急性虫垂炎が疑われる場合の診察では、まず問診と触診が行なわ

れます。触診では、図3の部分(マックバーネー点といいます)な

どを押して、痛みの有無や程度を調べます。また、血液検査(急

性虫垂炎になると白血球の数が多くなる)や超音波検査、CTを使っ

た検査を行ない、進行度や周辺器官への影響などを確認します。

その後、治療となるわけですが、その治療法は大きく分けて2つ。

手術療法で虫垂を切除するか、抗生物質を使って炎症を緩和す

る、俗にいう「散らす」かのどちらかになります。

この判断は、発症してからの経過時間や、炎症の進行度、穿孔が

生じているかどうか、などを踏まえた上で判断されます。


・手術療法

もっとも確実な治療法といえます。以前は開腹手術が一般的でし

たが、現在では、身体への負担が少なく、術後の回復が早いの

で、お腹に小さな穴を数か所開けるだけで行なえる腹腔鏡下手術

が増えてきました。

ただし、症状が悪化している場合は、開腹手術でしか治療できな

いこともあります。


・薬物療法

抗生物質を投与して炎症を緩和させる療法で、俗に「(痛みを)散

らす」などといわれます。初期段階であれば手術療法と同じくら

いの効果があります。ただし、抗生物質の投与のみで治療した場

合、再発する確率は高いという研究結果も報告されていますか

ら、不安な方は医師の説明をしっかりと受けるようにしましょ

う。

なお、手術療法を行なう前後に、抗生物質を投与することもあり

ます。


急性虫垂炎(盲腸)というと、「手術は簡単だし、それほど恐い病

気ではない」という考え方が一般的なようです。確かに、発症初

期であれば入院日数も短くてすみますし、手術も困難ではありま

せん。しかし放置してしまうと、手術も簡単ではなく、重篤な状

態になってしまう危険性があります。

どのような病気でもそうですが、急性虫垂炎も初期対応が非常に

大切。「お腹が痛いくらい大丈夫」と我慢せず、すぐに医療機関

(外科または胃腸科)を受診してください。


このウインドウを閉じる
この病院のホームページへ