DNAに蓄積された傷が、老化の大きな原因だった
医学・生命科学の進歩で寿命はまだまだのびる可能性を秘めている。しかし、たとえ200歳まで生きられたとしても、寝たきりで思考能力もないという形ばかりの長寿では魅力もうすれる。できるだけ老化をさけながら長寿を全うできる人生こそが、だれもが望むものだろう。
では老化はなぜおきるのだろうか。「老化の仮説は研究者の数だけある」といわれるほど多様だ。その中で代表的なものに「プログラム説」と「すり切れ説」とがある。
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プログラム説は、老化がすでにDNAの中にプログラムされているとするものだ。例をあげれば、細胞の分裂寿命を決めるテロメアがある。テロメアは、染色体(もしくはDNA)の末端にある「TTAGGG」という6つの塩基のくりかえし構造のことである。
細胞分裂では完全に元の長さのDNAが複製されるわけではなく、テロメア部分は分裂のたびに少しずつ短くなっていく。テロメアが極端に短くなると、染色体同士が末端で結合しやすくなってそれ以上増殖できなくなり、組織にも支障がでる。テロメアの長さはいわば、細胞の分裂寿命をあらわす砂時計といえる。
一方、すり切れ説は、ヒトを車にたとえて考えるとわかりやすい。車はどんなにていねいに運転したとしても、長い年月の間に個々の部品が少しずつ傷つき、磨耗していく。最後にはエンジンも止まって、"死"をむかえる。ヒトも似たようなもので、紫外線や活性酸素、有害化学物質などの攻撃によって、年をとると細胞内のあちこちに傷がたまってしまうのだ。
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■テロメアの短縮
DNAがおさめられている染色体の末端にはテロメアとよばれる領域がある。テロメアは細胞分裂のたびに短くなり,ある長さまで短くなると細胞はそれ以上分裂できなくなる。このため,テロメアは細胞のf年齢eをあらわす一つの指標となっている。
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生命の設計図であるDNAに傷がつくと正常なタンパク質が合成できなくなり、細胞間の情報伝達などがうまくいかなくなる。また細胞膜に傷がたまると、細胞間の物質の受け渡しなどに支障をきたしてしまう。
ヒトは確かに車よりはよくできており、傷ついたDNAを修復したりして、なるべく細胞内に傷をためないように努力している。しかしその機能も100%とまではいかず、傷は少しずつたまっていかざるを得ない。そしてある程度傷が積み重なると、臓器の障害や皮膚のしわといった老化症状として表面にあらわれてくるのだ。
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■ DNAの傷
活性酸素や紫外線,有害化学物質などによって,生命の設計図であるDNAに傷がつくと,タンパク質がうまくつくれなくなり老化の原因となる。
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