メディカルニュース
ストレスががんを悪化させるしくみ
●Nature Neuroscience 2019年7月8日
交感神経のはたらきによって,がんの増殖や転移がおきるようだ

 ストレスがかかると,「自律神経」の一種である「交感神経」が反応することが知られている。これまでに,慢性的なストレスが,がんの進行を加速させるという研究結果があった。しかし,交感神経とがんの具体的な関係はよくわかっていなかった。
 今回,岡山大学の神谷厚範博士らは,マウスの乳がんが進行するにしたがって,自律神経が乳がんの組織に入りこむことを発見した。そして,その状態で交感神経を刺激すると,がん細胞が増殖したり,がんの転移がふえたりすることを明らかにした。一方で,がん組織から交感神経を取り除くと,がん細胞の増殖やがんの転移がおきにくくなることもわかった。また,ヒトにおいても,乳がんの組織内での交感神経の密度が高いと,がんが再発しやすくなることが明らかになった。
 現在の主ながんの治療法は,手術や薬物治療,放射線治療だが,副作用の問題などから,新たながん治療法が期待されている。今回の結果から,自律神経を操作する新たながん治療法が生まれる可能性がある。

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