メディカルニュース
死後にブタの脳の機能が回復した
●Nature 2019年4月7日
死の定義が見直されることになるかもしれない。

   人間を含む哺乳類の脳は,酸素不足に対して非常に弱いとされている。脳に血液が届かず,酸素が供給されなくなると,脳の細胞が死んで,回復不能な障害がおきると考えられてきた。
 アメリカ,イエール大学のセスタン博士らは,酸素や,脳を保護する成分,合成血液などが含まれている特殊な液体を用意した。そしてその液体を,死後4時間が経ったブタの脳に,心臓の鼓動に似たリズムで送りこんだ。すると,脳の細胞死が少なくなったり,脳の細胞どうしの間で情報を伝達する部分である「シナプス」が活動したり,脳内で酸素が消費されたりすることが確認された。つまり,脳の機能の一部が回復したのである。これらは,ブタが死んでから10時間以上経ってからのことだった。
 今回の結果は,哺乳類の脳の機能は,適切な処置によってある程度回復しうるということを示しており,脳梗塞などの治療への応用が期待されている。その一方で,何をもって死とするのか,その定義について見直しをせまることになるかもしれない。

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