潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患は,腸などの粘膜に炎症がおきる病気だ。
これまでの研究で,20塩基ほどからなる小さな核酸「マイクロRNA」の中に,炎症の原因となるタンパク質がつくられるのを,おさえるはたらきをもつものがあることが知られていた。しかし,マイクロRNAを安定して患部に届ける方法がみつかっていなかった。
大阪大学の深田唯史博士らは,マイクロRNAの一種である「mir-29」を,「炭酸アパタイト」とよばれるナノ粒子と結合させて,炎症性腸疾患のマウスにあたえた。その結果,病気の発症にかかわる免疫細胞である「樹状細胞」のはたらきがおさえられ,炎症を引きおこすタンパク質「IL-6」などの量が減っていた。今回の方法を用いてmiR-29を効率よく患部に届けることで,炎症性腸疾患の治療が可能になるかもしれない,と博士らはのべている。
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