エイズの原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染を予防する効果的なワクチンは開発できていない。これまでに,HIVに結合して,感染能力を失わせる抗体「bNAbs」が,HIVに感染した患者の体内からみつかっていた。しかし,この抗体を人体に投与しても,すぐに分解されるため,エイズの予防効果は十分に得られていなかった。
アメリカ国立衛生研究所のマーチン博士らは,bNAbsを一部改変し,安定性を高めた抗体をつくりだした。これをアカゲザルの静脈に注射(静脈内注射)した結果,サル免疫不全ウイルス(SIV)の感染を27週間ほど防ぐことができた。投与した抗体はサルの血液内に26〜41週間とどまっていたという。
また,より簡便な皮下注射(静脈内注射よりも浅い皮下組織への注射)でも,20週間ほど感染を防ぐことができた。ヒトのHIV感染予防にも役立つかはいまだ不明であり,慎重に臨床試験を行う必要がある,と博士らはのべている。
|