メディカルニュース
心臓を再生せよ
nature 2017年10月12日号
心筋細胞の増殖を妨げる反応を抑制することで,心臓を再生することができるかもしれない。

 心臓のポンプ機能が著しく低下する心不全は,心臓移植や補助人工心臓しか根本的な治療法がない。それは,心臓は再生能力がとぼしいためだ。心筋細胞の増殖や再生を,「Hippo経路」とよばれる心筋細胞内でおきる一連の反応が阻害していることが知られている。
 アメリカ,ベイラー医科大学のリーチ博士らは,Hippo経路に必要な「salv」という遺伝子を,望んだ時期にはたらかなくできるマウスをつくり,マウスを心不全にさせた後に,遺伝子のはたらきを止めた。すると,心臓の機能に回復がみられ,このマウスでは心筋細胞の増殖に関わる遺伝子のはたらきが強まっていた。また,エネルギーを生む細胞内小器官「ミトコンドリア」の機能に関わる遺伝子のはたらきも強まっていた。
 この遺伝子をはたらかなくすると心臓機能の回復が弱くなったことから,回復にはミトコンドリアが関わっているようだ。Hippo経路の抑制で,心不全が治療できるかもしれない。

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