メディカルニュース
がんを殺すウイルスを薬で増強
Science Translational Medicine2017年8月23日号
 がんを破壊する「M1」というウイルスとセットで投与すると,破壊の効果が大幅に上がる化合物が発見された。

 「M1」とよばれるウイルスには,さまざまな種類のがんの腫瘍を破壊する能力があることが知られている。  中国,中山大学のチャン博士らは,肝細胞がんに対するM1ウイルスの効果をさらに高めるために,ウイルスの効果を増強する作用のある化合物を探した。その結果,細胞内の異常なタンパク質の分解などにかかわっている「バロシン含有タンパク質(VCP)」のはたらきをおさえる化合物が,腫瘍の破壊に効果的であることがわかった。この化合物を,がんのモデルマウスにM1ウイルスといっしょに投与したところ,M1ウイルスの効力が3600倍まで増加したという。メカニズムを調べたところ,この化合物は,タンパク質合成の現場である「小胞体」に異常なタンパク質が蓄積する「小胞体ストレス」を引きおこすことで,がん細胞のアポトーシス(自発的な細胞死)を促進していた。この組み合わせは,がんの有望な治療法となる可能性がある。

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