メディカルニュース
薬で網膜が再生できるかもしれない
nature 2017年8月3日号
成長したマウスの網膜にある細胞を,神経細胞へと変化させることに成功した。

 ゼブラフィッシュなどの一部の魚類は,網膜が損傷しても再生できる。これは,網膜が損傷すると,網膜特異的グリア細胞(ミュラーグリア細胞)で「Ascl1」というタンパク質がDNA(デオキシリボ核酸)にはたらきかけ,ミュラーグリア細胞が網膜の神経細胞へと変化(分化)するからだ。通常,哺乳類では網膜が損傷してもAscl1は増加しないが,生まれたてのマウスの網膜でAscl1を強制的につくらせると,網膜神経細胞を再生できる。ただし出生後16日以降は再生しない。  アメリカ,ワシントン大学のジョースタッド博士らは,網膜を損傷した大人のマウスを使い,ミュラーグリア細胞でAscl1を強制的につくらせ,ミュラーグリア細胞を神経細胞へと変化させることに成功した。長大なDNA分子の,固く折りたたまれて機能しにくい状態を薬剤でゆるませ,Ascl1をはたらきやすくさせたことが成功の要因だという。薬剤の投与で網膜の再生が可能になるかもしれない。

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