ヒトの寿命が昔にくらべてのびたことで,加齢にともなう認知障害が新たな問題となっている。年老いた脳の状態を改善するために,神経細胞などの異常を治療する方法が考えられている。
高齢者の脳では,「ロイコトリエン」が増加しているという報告がある。この物質は,アレルギーなどのいわゆる「炎症」にかかわる物質だ。つまり高齢者の脳では,炎症がおきている可能性がある。オーストリア,パラケルスス医科大学のマーシャリンガー博士らは生後4か月の若いラットと,脳に炎症がある生後20か月の年老いたラットに,ロイコトリエンと反応する物質の機能をおさえる薬を6週間にわたって投与した。その結果,年老いたラットの脳の炎症が改善し,認知機能も回復した。
この結果は,ロイコトリエンと反応する物質の機能をおさえることで認知障害を治療する新しい治療薬の開発につながるかもしれない,と博士らは考えている。
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