腎臓は,「ネフロン」という組織が集まってでできている。ネフロンには,体内の水分やイオン,pHなどの恒常性を維持する機能がある。また,ホルモンの分泌も行っている。ネフロンの複雑な機能と構造から,腎臓は試験管内でつくるのが最もむずかしい臓器だろうと考えられていた。
岡山大学の喜多村真治博士らは,成体のラットの腎臓から取りだした「幹細胞」の一種「腎幹細胞」を試験管内で培養して,ネフロンが集まった立体的な腎臓の構造体をつくりだすことに成功した。「幹細胞」とは,分裂して複数の種類の細胞をつくる(分化する)ことができる細胞だ。作製された腎臓の構造体を解析したところ,腎臓を構成する要素を,血管以外すべてもっていたという。
今回の成果が応用され,人の腎臓を体外でつくりだすことができるようになれば,腎臓病の研究や,再生医療に役立つと期待されている。
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