人の記憶をつかさどる脳の「海馬」は,物事を学習する際に重要な領域だ。今のところ,子供の思考が発達する過程で,海馬の活動がどのように変化していくのか,よくわかっていない。
アメリカ,スタンフォード大学のチン博士らは,7歳〜9歳の子供たちに算数の計算をさせ,そのときの脳の活動を調べた。この調査は,同じ子供たちを対象に1年間隔で2度行われた。その結果,初回の調査時にくらべて,1年後には,計算をするときの海馬のはたらきがより活発になっていることがわかった。逆に,数を数えるのに必要とされる「前頭前野」や「頭頂葉」のはたらきは低下していた。子供たちは,計算を行う際に,より記憶をたよりにした方法を使うようになったとみられる。
今回の発見により,子供たちの思考の発達にともない,海馬のはたらきが変化していくことが示された。
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