がんの分子標的治療が注目されているが,実際のところほとんどの症例において,生存期間を大幅に延長させることはできない。この原因として,標的分子の機能を完全に抑制できないことや,別の分子の活性化によって補完されてしまうことが考えられている。だが,がんが抵抗性を獲得するしくみはよくわかっていない。
今回,カリフォルニア大学サンディエゴ校のミシェル博士らのグループは,グリオブラストーマ(膠芽腫)の細胞株と臨床検体を用いて,EGFRという受容体の酵素,チロシンキナーゼを阻害する分子標的治薬である「エルロチニブ」に抵抗性を獲得するしくみを明らかにした。EGFRはグリオブラストーマの多くの症例で変異しており,がんの増殖を亢進させる。エルロチニブをグリオブラストーマ細胞に投与すると,染色体外にあるDNAに存在する変異EGFR遺伝子が消失することがわかった。エルロチニブをこの細胞から除去したところ,染色体外にある変異EGFR遺伝子がふたたび出現した。
今回の発見により,がん細胞は染色体外にある遺伝子の量を制御することで,分子標的治療に対する抵抗性を獲得していることがわかった,と博士らはのべている。
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