メディカルニュース
遺伝子治療で嗅覚が回復
nature medicine 2012年9月号
遺伝子を導入することで,繊毛の構造を元にもどすことに成功した。

 繊毛は細胞に生えている,細胞の運動や嗅覚などに必要な細胞小器官だ。ヒトにおいて繊毛の構造や機能が正常でなくなると,遺伝病の一つである繊毛関連疾患になる。この病気の治療法はまだ確立されていない。
 アメリカ,ミシガン大学のマキンタイア博士らは,マウスに遺伝子を導入することで,繊毛関連疾患の一つ「無嗅覚症」を治療することに成功した。博士らは,「IFT88」というタンパク質に変異をもつマウスが無嗅覚症になることを明らかにした。これは,嗅覚の神経細胞で繊毛を失ったためだという。このマウスの嗅覚の神経細胞にウイルスを用いてIFT88遺伝子を導入したところ,繊毛の構造が回復し,マウスはにおいを感じることができるようになった。また博士らは,IFT88遺伝子の変異が,ヒトの繊毛関連疾患の原因であることも明らかにした。
 今回の成果は,遺伝子治療の実現につながる,と博士らはのべている。

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