メディカルニュース
がんを攻撃しないしくみ
nature immunology 2012年9月号
樹状細胞がもつ受容体が,がんへの免疫反応を抑制することがわかった。

 近年,ヒトにもともとそなわっている免疫システムで,がんをおさえる薬剤の研究が進められている。その一つに,核酸を注入し,免疫細胞を活性化させる「核酸ワクチン」がある。このワクチンは,体内の異物を認識する樹状細胞にはたらきかける。しかし,なぜか期待されるほどの効果が得られていなかった。
 今回,北海道大学の千葉殖幹博士らは,樹状細胞がもつ「TIM-3」という受容体がその原因であることを明らかにした。博士らが,ヒトやマウスのがんに存在する樹状細胞を調べたところ,通常の樹状細胞よりもTIM-3がふえていたという。TIM-3は「HMGB1」というタンパク質と結合し,核酸が樹状細胞の細胞内に取りこまれるのを阻害する。その結果,樹状細胞が活性化せず,免疫反応が抑制されていたのだ。
 TIM-3の機能を阻害する薬を開発することで,がんの効果的な治療薬ができるかもしれない,と博士らはのべている。

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