メディカルニュース
胎児を守るしくみ
Science 2012年6月8日号
母親の免疫システムが,なぜお腹の中の胎児を攻撃しないのかがわかった。

 胎児は,遺伝子の半分を父親から受け継いでいる。そのため,母親の体内では異物として認識されかねない。しかし実際には,母親の免疫システムから攻撃を受けることはほとんどない。これはなぜなのだろうか。
 アメリカ,ニューヨーク大学のナンシー博士らは,このしくみを明らかにした。細菌などの異物が体内に侵入した際に攻撃する免疫細胞に「エフェクターT細胞」がある。通常,体内に異物があると認識された際には,エフェクターT細胞を誘い寄せるはたらきをもつ「ケモカイン」というタンパク質が分泌される。博士らは,胎児と胎盤を包む脱落膜の中には,エフェクターT細胞が集まっていないことを発見した。胎児を攻撃してしまわないよう,脱落膜の細胞ではケモカインの分泌が抑制されていたためだという。
 今回の成果は,妊婦と胎児の間ではたらくしくみの詳細を知ることにつながるだろう,と博士らはのべている。

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