メディカルニュース
慢性痛発生の黒幕
Journal of Neuroscience2012年3月14日号
慢性痛の発生に,「TRPM2」というタンパク質が関与していることがわかった。

 傷などによる痛みは一過的なものが多い。一方,病気により引きおこされ,病気が治ったあとでも取れない痛みもある。これを慢性痛という。慢性痛は,免疫系細胞が神経細胞に作用し,炎症をおこすことで発生する。「TRPM2」というタンパク質は,免疫系細胞ではたらき,炎症反応に大きく影響することが知られている。しかし,慢性痛をもたらす神経炎症にも関与しているかは不明だった。
 今回,京都大学の原口佳代博士らは,TRPM2をもたないマウスを用いた実験により,TRPM2が神経炎症に関与していることを明らかにした。このマウスは,熱や圧迫による刺激には正常に反応したが,人為的におこした神経炎症に対しては反応をしなかった。これは,TRPM2が慢性痛の発生にかかわっていることを示している。
 この研究をさらに発展させることで,慢性痛を根本から治療できる薬の開発につながるだろう,と博士らはのべている。

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