メディカルニュース
ウイルスの収納術
nature communications 2012年1月24日
インフルエンザウイルス内に,RNAがどのようにおさまっているかがわかった。

 A型インフルエンザウイルスは,設計図である「RNA」をヒトの細胞に注入し,細胞にみずからの複製をつくらせる。このRNAは,直径わずか1万分の1ミリメートルのタンパク質の殻の中に8つ収納されているが,どう収納されているかはなぞだった。
 東京大学の野田岳志助教らは,ウイルスに感染した細胞を厚さ1万分の2ミリメートルに切り,電子顕微鏡で立体的に観察した。その結果,各RNAは棒状になっており,8本の棒が束になって殻の中におさまっていることがわかった。また,8つのRNAはヒトの細胞を飛びだす際にはすでに集まって束となっていることもわかった。この束は,細胞の膜を貫通する過程でタンパク質の殻でおおわれ,そのまま新たなウイルスになる。
 インフルエンザはときに多くの死者を出す病気だ。今回解明したRNAの構造をこわすような薬剤の開発は,新しい治療につながるだろう,と博士は期待している。

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