メディカルニュース
抗生物質を排出するしくみ
nature 2011年12月22日号
多剤耐性菌がさまざまな抗生物質を認識し,排出するメカニズムを解明した。

 さまざまな抗生物質に対して耐性をもつ「多剤耐性菌」は,たびたび院内感染を引きおこし,問題となる。細菌が多剤耐性を獲得するためには「AcrB」という,多くの抗生物質を認識し,細胞外に排出するはたらきをもつタンパク質が重要である。しかし,AcrBが抗生物質をどのように認識し,排出するかは不明だった。
 大阪大学の中島良介博士らは,分子量が大きな抗生物質とAcrBとが結合した状態の構造を解析した。その結果AcrBは,「近位ポケット」と「遠位ポケット」という,抗生物質が結合する場所を二つもつことがわかった。抗生物質はまず近位ポケットに入り,認識される。その後,抗生物質は遠位ポケットに送られ,結合し,細胞外に排出されるのだ。一方,分子量の小さな抗生物質は,近位ポケットに結合することなく直接遠位ポケットに送られたという。
 今回の発見により,多剤耐性菌感染症への新たな創薬につながるだろう,と博士らはのべている。

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