メディカルニュース
乳がんになる遺伝子状態
PNAS 2011年10月25日号
がんを抑制する遺伝子が1つ欠けても,がんの「兆候」がみられるようだ。

 ヒトは両親から1組ずつ遺伝子を受けついでいる。ゆえに,ヒトは乳がんを抑制する遺伝子として知られる「BRCA1」を2つもっている。遺伝性乳がんの患者の約3割は,BRCA1の片方が生まれつき機能しない「ヘテロ変異」である。両方のBRCA1が機能しない場合,細胞ががん化することが知られている。そのため,これまで乳がんの発症は,正常なBRCA1が何らかのきっかけではたらかなくなることが原因だと考えられてきた。しかし,その詳細は不明であった。
 今回,ジョンズ・ホプキンス大学の小西裕之博士らは,ヘテロ変異したヒト乳腺上皮細胞をつくり,正常な細胞と比較した。その結果,放射線などによる遺伝子障害を修復する能力は,ヘテロ変異した細胞のほうが低いことがわかった。これは,ヘテロ変異した状態で,すでにがんになりやすい性質をもつことを示している。
 今回の発見により,ヘテロ変異の状態で,遺伝性乳がんの発症を促進するはたらきがあることがわかった,と博士らはのべている。

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