メディカルニュース
トラウマ形成のかぎ
PNAS 2011年7月26日号
恐怖体験の記憶がつくられるしくみの一つが明らかになった。

 記憶において重要なはたらきをになっている脳の海馬には,「グルタミン酸受容体」というタンパク質分子がある。この受容体が,記憶形成においてどのような役割をもっているかは不明だった。
 横浜市立大学先端医科学研究センターの美津島大博士らは,恐怖記憶の形成の際,海馬の神経細胞にある「GluR1」というグルタミン酸受容体が,シナプスへ移動することを明らかにした。また,GluR1がシナプスへ移動した神経細胞を多くもつマウスほど,恐怖の記憶が長期間残ることを見いだした。さらに博士らは,GluR1が海馬のシナプスへ移動できないマウスをつくった。その結果,このマウスは恐怖の記憶が形成されなくなったという。
 これらの結果は,GluR1のシナプスへの移動が,恐怖の記憶の定着に必要であることを示している。今回の研究は,PTSD(心的外傷後ストレス障害)などに対する新薬開発に役立つのではないか,と博士らはのべている。

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