メディカルニュース
認知症治療の新たな標的
nature neuroscience 2011年8月号
アルツハイマー型認知症の原因となるタンパク質が新たに特定された。

 アルツハイマー型認知症(AD)とは,脳の障害により記憶力などが低下する病気だ。これまで,ADが発症する原因は「アミロイドベータ(Aβ)42」というタンパク質が脳に蓄積するためだと考えられていた。一方で,AD患者の脳には,Aβ42に次いでAβ43というタンパク質が多量に存在することがすでに知られている。しかし,Aβ43の役割は不明のままだ。
 理化学研究所の斉藤貴志博士らは,Aβ43をつくりだす「プレセニリン1」が過剰にはたらくようにしたマウスを作製した。このマウスの脳を観察したところ,AD患者の脳にみられるようにAβ43の蓄積がおきていた。また,このマウスは,短期記憶の低下がみられたという。さらに,Aβ43はAβ42よりも少ない量で,神経細胞に対して毒性をあらわすこともわかったという。
 今回の発見は,Aβ43の産生をおさえるという,ADの新たな治療方法の開発につながるだろう,と博士らはのべている。

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