メディカルニュース
生ワクチンはもう不要?
nature 2011年6月16日号
免疫システムは,生きている細菌だけがもつ分子を認識していた。

 ワクチンには,生きた菌を使用した「生ワクチン」と,こわした菌からつくられる「不活化ワクチン」がある。生ワクチンは副作用が出やすいものの,不活化ワクチンよりも免疫反応をよく引きおこし,効果が高いことが知られている。この効果の差は,生きた菌が増殖でき,体内に侵入し感染するための病原性物質をつくりだすためとされてきた。だが,病原性物質をなくして弱毒化した生ワクチンでも,不活化ワクチンより効果は高く,この理由はなぞだった。
 アメリカ,マウントシナイ医科大学のサンダー博士らは,生まれつきそなわる自然免疫が,生きている菌のみがもつ「mRNA」(タンパク質の情報を伝達する分子)を検出してその菌の生存を感知し,免疫応答を強めていることを明らかにした。これは,病原性をもたなくても,生きている菌でさえあればおきることもわかった。
 不活化ワクチンにmRNAを加えることで,高いワクチン効果と安全性をあわせもつ新ワクチンができるのでは,と博士らはのべている。

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