メディカルニュース
遺伝子変異を読みとばす
nature communications 2011年5月10日
筋ジストロフィーの症状をやわらげられる可能性のある化合物が開発された。

 筋ジストロフィーは,筋肉を維持する「ジストロフィン」タンパク質が正常につくられないため,筋力が低下する遺伝病である。この病気には「デュシェンヌ型(DMD)」と「ベッカー型(BMD)」があり,ともに同じ遺伝子の変異により発症する。しかし,DMDでは変異のためにジストロフィンの合成が途中で止まってしまうのに対し,BMDではその変異の場所を読みとばすことで不完全ながらも最後までジストロフィンがつくられる。そのため,BMDはDMDよりも予後が良好である。
 神戸大学の西田敦志博士らは,筋ジストロフィー患者の筋肉細胞を用いて,BMDのように変異をスキップして遺伝子を読ませる薬剤の探索を行った。その結果「TG003」とよばれる低分子化合物を発見した。この物質を細胞に投与したところ,ジストロフィンの合成が促進されたという。
 この化合物を使えば,DMDの症状を緩和できるかもしれないと博士らは考えている。

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