メディカルニュース
不整脈のiPS細胞
nature 2011年3月10日号
遺伝的な不整脈患者のiPS細胞から心筋細胞をつくり,その機能を解明した。

 心室の収縮時間が通常より長い(QT延長)人は,心室性の不整脈による突然死のリスクをもつ。この疾患は遺伝性だが,薬剤など外部要因によって引きおこされることもある。QT延長がみられる遺伝性疾患の一つ「ティモシー症候群」の患者では,細胞膜にあり,カルシウムイオンを出し入れする部位の一つである「CaV1.2」の遺伝子の突然変異が,QT延長の原因となっている。だがその詳細は不明だった。
 アメリカ,スタンフォード大学の矢澤真幸博士らは,ティモシー症候群の患者の皮膚細胞からiPS(誘導多能性幹)細胞を作製し,心筋細胞へと分化させた。この心筋細胞の性質を分析したところ,不規則な筋収縮,カルシウムイオンの過剰な流入,QT延長などがみられ,疾患の再現が確認された。またCaV1.2を不活性化する薬剤を投与すると,これらの状態は正常にもどった。
 今回の研究は,ヒトの心室性不整脈のしくみの解明や薬剤開発に役立つ,と博士らはのべている。

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