メディカルニュース
細菌の土台をくずす
Science 2011年3月4日号
細菌が感染に使う「針」を支える土台の詳細な構造が明かされた。

 生物の細胞は,細菌の感染を防ぐ機構をもっている。そこで,ある種の細菌は自分のタンパク質を標的の細胞に注入し,細胞の防御機能をまひさせて感染を容易にしている。食中毒をおこす「サルモネラ菌」もこのような細菌の一種であり,物質を注入するための「針」と,針を支える「土台」からなる注入装置をもつ。土台は,針を注入するうえで重要だが,詳細な構造は不明だった。
 今回,オーストリア,ウィーン病理学研究所のシュライト博士らは,低温電子顕微鏡を用いてサルモネラ菌の観察を行った。その結果,土台は,複数のリングが同心円状に積み重なった構造をしており,120度回転させると同じ構造があらわれる対称性を持つということがわかった。
 多くの細菌が,サルモネラ菌と同じ型の注入装置をもつことが知られている。そのため,今回の土台の構造の解明により,感染のしくみの理解が深まり,さまざまな感染症治療薬の開発につながるのでは,と博士らはのべている。

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