メディカルニュース
がんを"食べて"退治
Science 2011年3月25日号
異物を食べる免疫細胞の活性化によって,膵管腺がんを治療可能かもしれない。

 膵臓の膵液を流す管にできる「膵管腺がん」を発症すると,高確率で死に至る。膵管腺がんの組織では,正常な免疫反応が抑制されていることはわかっていたが,効果的な治療法がなかった。
 アメリカ,ペンシルベニア大学のビーティー博士らは,免疫抑制を解除すれば,異物を食べる免疫細胞の一つ「マクロファージ」のはたらきなどで,膵管腺がんをなくせるかもしれないと考えた。ある種の免疫細胞の膜には「CD40」という受容体があり,この受容体を刺激することで抑制が解除される。そこで博士らは,CD40を刺激するタンパク質(抗体)を,抗がん剤とともに外科的に治療不可能な患者21人に投与した。その結果,15人で症状の改善や安定がみられたという。さらに,膵管腺がんを発症するマウスで同様の実験で,別の免疫細胞や抗がん剤がなくとも,マクロファージががん組織を破壊することがわかった。
 今回の発見により,CD40を標的とした薬で膵管腺がんの治療が可能になるかもしれない,と博士らはのべている。

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