メディカルニュース
腸組織の複雑な構造ができた
nature 2011年2月3日号
iPS細胞から,複雑な立体構造をもつ腸組織を生体外で作製することに成功した。

 肝臓の細胞などは,ヒトのiPS細胞から平面的に培養する「単層培養」で成長(分化)させてつくることができる。しかし,より複雑な3次元構造をもつ,腸などの器官を作製するのは困難だった。
 アメリカ,シンシナティ小児病院医療センターのスペンス博士らは,生体外でヒトiPS細胞を複雑な腸の組織へ分化させる方法を開発した。実際の腸の発生過程をまね,腸組織へ分化させる物質をうまく投与するという手法で,効率的に作製できた。この腸組織には,普通の腸組織と同じように,じゅう毛のような構造や腸内分泌細胞なども存在していた。また腸の形成過程をくわしく調べたところ,肛門に近い側の腸の形成に必要な物質もわかった。さらに,腸の幹細胞は,腸組織の分化過程で新たに生じることが示唆された。
 今回の発見は,試験管内で腸の疾患の研究を可能にし,腸の幹細胞にはたらきかける薬の開発にもつながりうる,と博士らはのべている。

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