運動機能に障害がおきるパーキンソン病では,中脳の「黒質緻密部」にある神
経細胞が失われる。この原因として,細胞の生存に必須なミトコンドリアの機能
が酸化ストレスにより低下することが知られている。しかし,黒質緻密部の神経
細胞のみが酸化ストレスを受けるしくみはなぞだった。
アメリカ,ノースウエスタン大学のグズマン博士らは,黒質緻密部の神経細胞
に周期的に取りこまれるカルシウムが,酸化ストレスにつながると考えた。そし
て,酸化を感知できるタンパク質をマウスのミトコンドリア内部で発現させた。
その結果,細胞内にカルシウムを取りこむ「L型カルシウムチャネル」が酸化ス トレスを引きおこすことを見いだした。さらに,早期発症型のパーキンソン病に かかわる遺伝子の異常は,酸化ストレスを
取り除くはたらきを低下させているこ ともわかった。
今回のカルシウムチャネルのはたらきを阻害できる薬は,すでにヒトへの使用
が認可されている。このような薬でパーキンソン病患者の神経を保護できるかも
しれない,と博士らは考えている。
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