メディカルニュース
皮膚から白血球をつくった
nature 2010年11月25日号
 たった一つの遺伝子で,「繊維芽細胞」が「血球系細胞」に"変身"した。

 「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」は,ほぼすべての細胞に分化できる。そのため,皮膚などの細胞をiPS細胞にいったん変換すれば,間接的にほしい細胞が得られる。一方で,iPS細胞を介さずに特定の細胞へと直接つくりかえることも可能だと考えられている。実際マウスでは,皮膚などを構成する「繊維芽細胞」から,神経細胞や心筋細胞がつくられた。しかし,ヒトで同様の直接変換が可能かは不明だった。  今回,カナダ,マックマスター大学のソボー博士らは,ヒトの繊維芽細胞を血球のもとになる前駆細胞へつくりかえることに成功した。iPS細胞をつくるための四つの遺伝子のうちの一つ「OCT4」を導入するだけで,血球系の細胞ではたらく遺伝子が活性化したという。さらに特定のタンパク質を添加することで,白血球などへと分化させることもできた。これらの細胞の機能は正常だった。 がん化のおそれのあるiPS細胞を介さないこの手法は治療に応用可能だ,と博士らはのべている。

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