メディカルニュース
細胞から異物を捨てる
nature 2010年10月21日
多剤耐性にかかわる輸送体のうち,唯一不明だった型の構造が解明された。

 細胞膜を貫通するタンパク質「多剤排出輸送体」は,細胞内から薬剤などの異物を排出するため,薬剤耐性に重要な役割をもつ。このうち「MATE」型に属する輸送体は,バクテリアやほ乳類でも,複数の薬剤に耐性をもつ「多剤耐性」にかかわるものだ。このようなMATE型の輸送体は,多剤耐性にかかわる輸送体の中で唯一,構造が決定されていなかった。  アメリカ,スプリクス研究所のカ博士らは,コレラ菌の「NorM」というMATE型輸送体の構造を,X線を用いて解析した。その結果,輸送体は,細胞膜の外側の膜に二つの穴でつながっていた。また,らせん構造が12回細胞膜を貫通するという,ほかの多剤排出輸送体にはない独特な構造をしていた。さらに,排出にかかわる領域が,これまで輸送に重要と考えられていた場所の近くに存在することも確認された。  今回の成果から,多剤耐性菌に対する新たな治療薬が作製できるかもしれない,と博士らはのべている。  

CLOSE

CLOSE