「タキソール」は,太平洋イチイの木からその成分がみつかった強力な抗がん剤である。しかし現在,かわりとなる似た構造の物質は少なく,製造コストが高い。
今回,マサチューセッツ工科大学のアジクマール博士らは,大腸菌の遺伝子を改変し,タキソールへと変換できる「タキサジエン」を高濃度でつくらせることに成功した。博士らは,合成経路を前半と後半の二つにくぎり,二つの経路が最適なバランスとなる遺伝子改変の条件を特定した。その条件で遺伝子を改変した大腸菌では,タキサジエンの蓄積をさまたげる「インドール」の量も最小限におさえられ,タキサジエンの蓄積量を最大化できた。
今回の手法を応用すれば,タキサジエンに構造の似たほかの有用な物質も効率的につくれるのではないか,と博士らはのべている。
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