メディカルニュース
アルツハイマーに新標的
nature 2010年9月2日号
生体機能に影響をあたえずに,アミロイドβだけを減らす標的候補をみつけた。

 アルツハイマー病の最も目立った特徴は,「アミロイドβ」の蓄積である。アミロイドβは,「γ-セクレターゼ」という酵素によって生成する。一方,γ-セクレターゼが作用するタンパク質は多く,正常な生体機能に必須の役割もある。この役割には影響をあたえずにアミロイドβ生成をおさえられれば,効果的な治療薬を開発できる。  今回,アメリカ,ロックフェラー大学のハー博士らは,新しいγ-セクレターゼ活性化タンパク質「GSAP」を発見した。GSAPは,アミロイドβの産生だけを劇的に増加させていた。人工的につくったGSAPをはじめ,細胞株やアルツハイマー病モデルマウスを用いたさまざまな実験で検証した結果,GSAPが少なくなったり,その活性がおさえられたりすると,アミロイドβが減ることがわかった。  また,γ-セクレターゼの生体機能に必須な役割に影響しないことがすでにわかっている薬に,抗がん剤の「イマチニブ」がある。この薬は,GSAPの作用をさまたげることで,アミロイドβの生成をおさえることもわかった。  これらの結果より,GSAPは,γ-セクレターゼの重要な機能に影響をおよぼすことなくアミロイドβをおさえるための標的になりうる,と博士らは考えている。  

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