全遺伝情報をRNA(リボ核酸)の形でもつ「RNAウイルス」の異種間伝播は,さまざまな病気を出現させてきた。狂犬病ウイルスや,風土病として確立される可能性があるSARS(重症急性呼吸器症候群)の原因であるコロナウイルスなどが,その例だ。RNAウイルスの異種間伝播は,ヒトの生存にとっても重要な問題であるが,異種間伝播の頻度と出現を規定する要因は不明なままであった。
アメリカ,疾病対策予防センターのストライカー博士らは,北アメリカに生息する23種のコウモリから,数百種類の狂犬病ウイルスを採取し,異種間伝播の発生率や新たに宿主となった種でどのように定着してきたかを調べた。その結果,異種間伝播もその後の宿主の乗りかえも,コウモリの種間で系統学的にはなれるほど,おこりにくくなることがわかった。
今回の解析手法は,異種間伝播するほかのウイルスを解析するときにも有効だろう,と博士らはのべている。
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