メディカルニュース
"諸刃の剣"の変異
Science 2010年8月13日号
寄生虫を退治するために必要な遺伝子変異が,腎臓病の発症率を上げていた。

 アフリカ系アメリカ人は,ヨーロッパ系アメリカ人よりも腎臓病になる率が高い。アメリカ,ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センターのジェノベーゼ博士らは,遺伝子を調べることで,この理由をさぐった。  その結果,博士らは「アポリポタンパク質L?1(APOL1)」をつくる遺伝子にある2か所の変異が,特定の腎臓病の発症率が高いことに関係があることを突き止めた。APOL1は,血液中に含まれるタンパク質で,「アフリカ睡眠病」などを引きおこす寄生虫「トリパノソーマ」をとかす成分である。実験によると,今回特定された2か所の変異をもつAPOL1のみが,アフリカで広まる「ブルセイトリパノソーマ」という種をとかすことができたという。  今回の遺伝子変異はアフリカ人には広くみられるが,ヨーロッパ人には見あたらない。この遺伝子変異は,アフリカでは生存に必要だったため広まったようだ,と博士らは推測している。  

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