メディカルニュース
体外で肺を人工的に再生
Science 2010年7月30日号
傷ついた肺を取りだして再生し,ふたたび移植できるようになるかもしれない。

 肺の疾患で毎年多くの人が亡くなっている。肺の再生能力には限界があり,深刻な損傷を受けた場合,移植が第一の選択肢だ。しかし,肺移植は高価で,10年後の生存率も10?20%しかなく,ドナーも慢性的に不足している。  アメリカ,イェール大学のペターソン博士らは,生体外で肺を再生できないか試してみた。まず,ラットから肺を取りだし,薬剤で処理して細胞をすべて除去した。すると,肺の複雑な分枝を形づくる「細胞外マトリクス」のみが残った。この構造に,培養装置内で「上皮細胞」と「血管内皮細胞」を定着させたところ,秩序よく定着し,肺を再構築することができた。この再構築した肺は,生体外では本物の肺と同等の性能だった。そこで,この肺をラットに移植したところ,最大120分という短い時間だが,ガス交換が行われた。  今回の結果は肺を生体外でつくるための第一歩で,細胞外マトリクスを利用した手法は肺を再生するのに有望だろう,と博士らは考えている。  

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