メディカルニュース
iPS細胞で病気を理解する
nature 2010年6月10日号
患者からつくったiPS細胞で,病気の原因となるシグナル伝達経路を特定できるかもしれない。

 遺伝的な病気の患者から「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」をつくりだすことは,病気の複雑な原因を明らかにし,新たな治療法を開発するのに有望だと考えられている。  アメリカ,マウントサイナイ医科大学のカルバハル?ヴェルガラ博士らは,常染色体の異常により複数の組織や臓器に影響をおよぼす「LEOPARD症候群」の患者からiPS細胞をつくった。博士らはさらに,患者の主な症状は「肥大型心筋症」であることから,つくったiPS細胞を心筋細胞へと分化させた。また,患者の健康な兄弟からも同様に心筋細胞をつくり,患者のものと比較した。  その結果,患者からつくりだした心筋細胞は,より大きく高度な筋節構造をもっていた。そして,心臓肥大に関係するシグナル伝達経路に特徴的な遺伝子が,患者の細胞では発現していることがわかった。博士らは,この方法を使えば,病気のシグナル伝達経路に関わる分子の情報を,正確に得ることができる,とのべている。  

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