細菌が体全体に感染すると「敗血症」になる。敗血症では,細菌感染に対して自然免疫が応答し,好中球やマクロファージが活性化する。これらの細胞は「炎症性サイトカイン」を分泌し,組織再生をうながす。しかし,過剰に炎症性サイトカインが分泌されると,全身に炎症がおこって組織に損傷をあたえ,患者は死亡する。敗血症に至るしくみについてはさまざまなことがわかってきているが,まだ不明な点も多い。
シンガポール国立大学のプニート博士らは,「スフィンゴシンキナーゼ1(SphK1)」という酵素が,敗血症時の炎症性サイトカインの分泌に関与していることを明らかにした。SphK1の活性を阻害すると,細菌感染による炎症性サイトカインの合成を抑制できた。また,SphK1を特異的に阻害する薬で敗血症を抑制したマウスでは,抗生物質の効果が強くなった。博士らは,SphK1を抑制する薬によって,敗血症性ショックの治療が可能になるかもしれないとのべている。
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