メディカルニュース
神経をこわす薬物依存
Science 2010年6月25日号
 依存症のラットの神経細胞では,信号の伝達効率が調節できなくなっていた。

 麻薬などの薬物を長期間摂取すると「薬物依存症」になり,脳は致命的なダメージを受ける。しかしながら,薬物依存症になるときに,脳の神経細胞にどのような変化がおきるのかは,よくわかっていなかった。  フランス,国立衛生医学研究所のカサネッツ博士らは,ラットに麻薬の一種「コカイン」を自由に摂取させた。すると依存症になったラットでは,脳の「側坐核」にある神経細胞において「長期抑制」がおきなくなり,元の状態にもどらないことがわかった。  長期抑制とは,神経細胞どうしで信号を伝達するときの効率が下がる現象だ。脳は,特定の神経細胞の間で信号伝達を強くしたり弱くしたりすることで,記憶や学習を行う。そのため,長期抑制がおきなくなると信号の調節ができなくなり,記憶や学習の機能に障害がおきる。長期抑制の能力を保つ薬ができれば,依存症を防げるようになるかもしれない,と博士らはのべている。  

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