メディカルニュース
合わせ技の薬剤耐性
Science 2010年6月4日号
 タミフルが効かないインフルエンザの流行には,複数の変異がかかわっていた。

 インフルエンザウイルスがもつ「ノイラミニダーゼ」という酵素に「H274Y」という突然変異がおきると,酵素の構造がわずかに変化する。すると,インフルエンザ治療薬「タミフル」が効かなくなる。H274Yとは,酵素を構成するアミノ酸の端から274番目が,ヒスチジン(H)からチロシン(Y)に置きかわる変異のことだ。  H274Yがおきるとウイルスの感染力が弱まることが知られていた。にもかかわらず,この変異をもった薬剤耐性ウイルスが,2007?2008年にかけて世界中に広まった。アメリカ,カリフォルニア工科大学のブルーム博士らは,H274Y変異をもつウイルスを解析し,その原因を探った。  解析の結果,流行したウイルスには,H274Yによって失われた感染力をおぎなうような,別の変異がおきていたことがわかった。今回の成果を応用すれば,タミフル耐性をもったインフルエンザの流行を予測できるようになるかもしれない,と博士らは考えている。

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