「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」感染者の中には,治療なしでもHIVの量が非常に低レベルに保たれ,病気の進行や伝播がおこりにくい感染者がまれに存在する。このような感染者は,ある種の「HLAクラスI遺伝子座」がいちじるしく多い。その中で最も関連性が高い遺伝子座は「HLA-B57」である。HLA分子はウイルスのタンパク質断片(ペプチド)を提示し,免疫細胞の一種「CD8+T細胞」を活性化するため,HIVをうまく制御できると考えられている。
アメリカ,マサチューセッツ総合病院ラゴン研究所のコシュムルジュ博士らは,HLA-B57が胸腺におけるT細胞の選抜にあたえる影響を調べた。その結果,HLA-B57分子のペプチド結合特性は,HIVの変異体に高い交差反応性をもつT細胞を多く発生させ,ひいてはHIVを効果的に制御することがわかった。
今回の結果は,今後のHIVワクチン開発に新たな戦略をあたえるだろう,と博士らはのべている。
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