メディカルニュース
もの覚えが悪くなるわけ
Science 2010年5月7日号
加齢により脳内のタンパク質の状態が変化し,記憶がつくれなくなっていた。

 一般的に,年をとると学習能力や記憶能力が低下する。しかし,なぜ低下するのか,くわしいメカニズムはわかっていない。  ドイツ,ヨーロッパ神経科学研究所のペレッグ博士らは,マウスに学習と記憶の能力をはかる試験を行わせ,脳の「海馬」の状態をくわしく調べた。海馬は記憶の形成にかかわる部位である。すると高齢のマウスの海馬では,「ヒストン」というタンパク質の特定の場所に「脱アセチル化」という反応がおきていることがわかった。その結果,記憶の形成のために必要な複数の遺伝子が,正しくはたらかなくなっていた。また,脳内に薬剤を注入して脱アセチル化がおきたヒストンを元の状態にもどすと,記憶の形成に必要な遺伝子のはたらきが元にもどり,学習・記憶能力も回復した。  脳内における特定のタンパク質の状態を調べることで,学習・記憶能力の低下を早期に診断できるようになるかもしれない,と博士らは期待している。  

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