メディカルニュース
免疫をすり抜けるしくみ
Science 2010年4月2日号
サイトメガロウイルスは,免疫応答からのがれるためのタンパク質をもっている。

「サイトメガロウイルス(CMV)」はヘルペスウイルスの一種で,非常に多くの人々が感染している。ただし,健康な人は感染していても症状が出ないことが多い。CMVは,CMVに対する免疫をすでにもっていたとしても,もう一度感染することが知られている。この多重感染のしくみはまだ明らかになっていない。  アメリカ,オレゴン健康科学大学のハンセン博士らは,アカゲザルを使った感染実験を行い,CMVが多重感染するためには「CD8+T細胞」による免疫応答からのがれる必要があることを明らかにした。博士らは,遺伝子操作によって,「US2」?「US11」という糖タンパク質をつくれないCMVを作製した。これらの糖タンパク質は,CD8+T細胞に抗原を提示する「MHC-I」というタンパク質の機能を阻害するはたらきをもっている。感染実験を行うと,改変型CMVはMHC-Iの機能を阻害できないため,多重感染できなかった。  たとえ免疫をもっていたとしても,CMVはUS2?US11によって免疫応答からのがれることができる。CMVに対する効果的なワクチンがつくれなかったのはそのためだろう,と博士らは考えている。  

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