メディカルニュース
脳の中の連携を調べる
nature 2010年4月1日号
 海馬と前頭葉がうまく同期しないことが,統合失調症に関係しているようだ。

 脳の各領域の間でうまく連携できないことが,統合失調症の症状の背景にあると仮定されてきた。患者の脳活動の記録では,とくに前頭葉と側頭葉の間の連絡が変化していた。しかし,連絡の異常と統合失調症がどう関連しているかはよくわかっていなかった。  ヒト22番染色体は統合失調症を引きおこす可能性がある遺伝的因子として知られている。今回,アメリカ,ニューヨーク州立精神医学研究所のトルフィ博士らは,ヒト22番染色体に相当する染色体を損なったマウスを研究した。実験では,短時間の記憶を必要とする課題を実行させ,海馬と前頭前皮質の神経活動の同期度を測定した。野生型マウスでは,同期度が作業中にふえた。一方染色体を損なったマウスはこの課題をうまく学習できず,同期度も低かった。  ヒト22番染色体が損なわれ,脳の内部で神経活動をうまく同期できなくなることが,統合失調症の症状の要素の一つかもしれない,と博士らはのべている。  

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