メディカルニュース
mRNAをねらい撃つ
nature 2010年4月15日号
ヒトの体内でメッセンジャーRNAを分解することにはじめて成功した。

 メッセンジャーRNA(mRNA)はタンパク質を合成するための遺伝情報を運ぶ物質だ。mRNAに一本鎖のRNAを結びつけて,mRNAを分解する現象を「RNA干渉」といい,これまでヒトでRNA干渉を誘導する薬が研究されてきた。すでに細胞レベルでは,ヒトでも21塩基の2重鎖RNA(siRNA)がRNA干渉を引きおこすことがわかっている。しかしこれまで,ヒトの体内に直接siRNAを用いた例では,RNA干渉はおきていなかった。  アメリカ,カリフォルニア工科大学のデーヴィス博士らは,「メラノーマ」という皮膚がんの患者にsiRNAを点滴で投与した。その際,がん細胞のmRNAを標的とするsiRNAを,がん細胞になじみやすい微粒子で包んだ。すると,微粒子ががんに集まり,siRNAが標的mRNAを分解したことが明らかになった。今回ヒトの体内ではじめて,RNA干渉が引きおこされた。この成果はsiRNAを利用した治療法の開発につながるだろう,と博士らはのべている。  

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