メディカルニュース
細胞“内”にひそむ敵
nature 2010年3月4日号
細胞内で共生しているミトコンドリアが免疫反応を引きおこすことがわかった。

 すり傷やあざ,挫傷などの「創傷」ができると,「敗血症」に似た症状を引きおこす。敗血症による炎症は,細菌などの微生物が体内に侵入し,その分子のパターン(PAMP)が受容体に認識され,自然免疫細胞が活性化することでおきる。同じように,創傷によって細胞が傷つくと「ダメージ」関連分子パターン(DAMP)が放出され,自然免疫を活性化することがわかっていた。  細胞内のミトコンドリアは,もともとは外部から細胞に侵入した細菌由来で,今では細胞内で共生している。アメリカ,ベス・イスラエル・ディーコネス医療ZンターのZhang博士らは,細胞がこわれてミトコンドリアが流出するとDAMPが放出され,免疫が反応すると考えた。実験の結果,DAMPはミトコンドリアDNAを含んでおり,敗血症を引きおこすPAMPと同じ経路で自然免疫を活性化させていた。細胞の傷からあらわれた「内なる敵」が炎症を引きおこす鍵だった,と博士らはのべている。 -------------  

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