メディカルニュース
がん細胞の生存術
nature 2010年3月18日号
がん遺伝子を標的にした抗がん剤だけでは,がんの完治は困難かもしれない

 がんが生存するには,がん遺伝子の発現が必要である。そのためがん遺伝子の発現を抑制すれば,がん細胞の細胞死を引きおこせる。この現象を「がん遺伝子依存性」といい,がん遺伝子の発現を抑制する物質は抗がん剤に利用できると考えられている。  また,ヒトの固形がんでは,体細胞分裂の際に染色体が正確に複製されなくなり,さらなるがん化を引きおこす。染色体の不安定化とがん遺伝子依存性の関係はわかっていなかった。  アメリカ,スローン・ケタリング記念がんセンターのソティーロ博士らは,体細胞分裂を制御している遺伝子「Mad2」の過剰な発現により,染色体を不安定化させた上で,がん遺伝子を取りのぞいた。するとがん細胞の細胞死がおきた。ただし,染色体の不安定化したがんでは,がんの再発率が異常に高くなった。博士らは,がん遺伝子を標的とした化学療法後のがんの再発に染色体の不安定化がかかわっている,とのべている。 -------------  

CLOSE

CLOSE