メディカルニュース
白血病を引きおこす細胞内経路
Science 2010年3月26日号
 急性骨髄性白血病の進行に必要な,細胞の増殖や分化にかかわるシグナルを伝える経路がわかった。

 白血病は,血液を構成する細胞がふえつづけてしまうことでおきる。その一つ「急性骨髄性白血病(AML)」では,本来血中のさまざまな細胞に分化するはずの造血幹細胞が,分化せずにふえ続けてしまう。このようにがん化した細胞の一つが,「白血病幹細胞(LSCs)」だ。LSCsは無限に自己再生できるので,白血病の状態がつづく。LSCsだけを根絶できれば治療に役立つが,それをコントロールするためのシグナルを伝える経路がわかっていなかった。  アメリカ,ハーバード大学医学部のワン博士らは,AMLを人為的に引きおこすことのできるマウスを用いて,LSCsの自己再生に「Wnt/β-カテニン経路」が必要であることを示した。この経路は,細胞の増殖や分化をコントロールしており,過剰にはたらくと細胞はがん化する。通常,がん化していない細胞では,この経路がいったんはたらかなくなっている。しかしLSCsでは,何らかのがん遺伝子によって経路が再びはたらくようになっていると考えられた。正常な造血幹細胞が自己再生するのにβ-カテニンは必ずしも必要ではないため,この経路をおさえることで,正常な幹細胞に影響をあたえずにAMLを治療できるかもしれないという。 -------------  

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