メディカルニュース
"進化"するプリオン
Science 2010年2月12日号
プリオンタンパク質が,周囲の環境によって自然選択されることがわかった。

「プリオン」とは,牛の「海綿状脳症(BSE)」やヒトの「クロイツフェルト・ヤコブ病」などの神経変性疾患を引きおこす,タンパク質でできた感染性因子である。「プリオンタンパク質(PrPC)」は健常なヒトももっており病気を引きおこさないが,タンパク質の折りたたみに異常を生じ,「アイソフォーム型プリオンタンパク質(PrPSc)」になると病気を引きおこす。PrPScは,周囲の正常なPrPCをPrPSc型の構造に変換させる能力をもつ。  アメリカ,スクリプス研究所のリー博士らは,周囲の環境に応じてプリオンタンパク質が「自然選択」され,集団を構成するプリオンタンパク質の種類の割合が変化することを突き止めた。自然選択とは,自然環境が特定の変異をもった生物を選択し,進化をうながすはたらきのことである。プリオンは,核酸をもたずタンパク質のみで構成されているにもかかわらず,周囲の環境に応じて変異し,"進化"するのである。  今回の発見から,プリオン病の治療には,プリオンタンパク質の構造が変化しないように安定化させて薬剤耐性を防ぐことが必要だ,と博士らは考えている。 -------------  

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